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平安時代(11) [まとめプリント]

前回に引き続き、ややこしい荘園制を見ていきますよ-!
頑張りましょう!!

平安11.jpg

まずはプリントの左側、①荘園の歴史です。
前回の内容と重複する部分がたくさんあるので、復習も兼ねて進めていきましょうね。

8~9世紀ごろの政府の課題は、人口増加による口分田不足の解消と、税の増収です。
そこで、
722年の百万町歩開墾計画(ひゃくまんちょうぶかいこんけいかく)、
723年の三世一身法(さんぜいっしんのほう)を経て、
743年に墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)を発令します。
これによって公地公民の原則は崩壊し、人々は自分の土地を持つことができるようになります。

すると、力のある者、たとえば有力貴族や大寺社は、
周辺の班田農民(口分田を耕して租を納める、戸籍に登録された農民のこと)や、
口分田を捨てて浮浪(ふろう)している農民などを使ってどんどん開墾を進め、
自分の土地を広げてゆきます。

こうして生まれるのが、初期荘園(しょきしょうえん)です。
自分で開墾した土地なので、墾田地系荘園(こんでんちけいしょうえん)ともいいます。

初期荘園は、基本的には租が課せられる輸租田(ゆそでん)です。
有力貴族や大寺社は、自分たちの土地にかかる租を国衙におさめ、
残ったぶんを自らの収入としたのです。

一方、農民のなかにも豊かな者が現れるようになります。
こちらも浮浪する貧しい農民などを労働力として取り込み、どんどん力をつけてゆきます。
このような有力農民を、田堵(たと)といいます。
前回も登場しましたね!
覚えていますか?

有力貴族や大寺社、そして田堵が、それぞれ初期荘園を拡大するための労働力として、
浮浪する農民を使っていることからも分かるように、
このころ各地では、浮浪・逃亡(とうぼう)・偽籍(ぎせき)が横行しています。
結果、政府は戸籍・計帳によって農民たちを管理できなくなり、財政難に陥ってしまうのです。

そこで、政府は直営方式を採用し、
823年、大宰府管内に公営田(くえいでん)を、
879年、畿内に官田(かんでん)、または元慶官田(がんぎょうかんでん)を設置します。

ちなみにこのころ、天皇は勅旨田(ちょくしでん)、
院宮王臣家(いんぐうおうしんけ)は賜田(しでん)という土地を集積しています。

このあたりについては、平安時代(2)で詳しく書いたので、復習しておいてくださいね!

*   *   *

とはいえ、公営田や官田といった直営田(ちょくえいでん)を設置するだけで、
財政難が克服できるわけではありません。

902年には、醍醐天皇(だいごてんのう)が
延喜の荘園整理令(えんぎのしょうえんせいりれい)を出しますが、もはや手遅れです。

10世紀、政府はついに、税制の大転換に踏み切ります。
従来の人頭税(じんとうぜい)をやめて、
官物(かんもつ)・臨時雑役(りんじぞうやく)という地税を徴収することにしたのです。

この徴収は、これまでの郡司にかわって、国司が請け負うことになります。
徴税って、なかなか大変な作業なんですよね~…
そこで政府は、その見返りとして、国司に任国の統治を一任することにします。
税を徴収して、ちゃんと政府に納めてくれるなら、あとは好きにしてイイヨ!ということです。
結果、国司はオイシイ職業となり、成功(じょうごう)・重任(ちょうにん)が繰り返され、
受領(ずりょう)というガメツイ国司まで現れるようになるのです。

先ほども述べましたが、徴税はホントに大変です。
そこで国司は、有力農民である田堵を利用します。
新しい徴税単位である名(みょう)の耕作を田堵に任せ、税の納入を請け負わせるのです。
このように、名の経営を請け負う田堵を、とくに負名(ふみょう)と呼びます。
田堵(負名)のなかには、国司と手を結んで大規模な経営をおこなう、
大名田堵(だいみょうたと)と呼ばれる者も現れます。

*   *   *

土地の開発をどんどん進める大名田堵は、
やがて開発領主(かいはつりょうしゅ、または、かいほつりょうしゅ)と呼ばれるまでに成長します。

ややこしいですね…
田堵→負名→大名田堵→開発領主
という感じで成長していくんだと理解してください。

さらに、地元でブイブイいわす開発領主の多くは在庁官人(ざいちょうかんじん)となり、
国司不在の国衙、いわゆる留守所(るすどころ)の行政を担うようにもなるのです。

でもねー、開発領主なんて呼ばれちゃうくらい土地を広げてはみたものの、
めっっっっっちゃ税をとられるんですよ!

そこで開発領主たちは考えます。
なんとか税を逃れる方法はないかなぁ~…って。

するとね!
なんだかイイモノを持ってる権力者がいることを知るのです!!

そのイイモノとはズバリ!
不輸の権(ふゆのけん)・不入の権(ふにゅうのけん)という特権です!!

平安11-2.jpg

まず、不輸の権とは、税を免除される権利です。

ナニソレ!
めっちゃ羨ましくないですか?
みんなも「消費税を免除される権利」なんてあったら、欲しいでしょう!!
ないけどね(笑)

不輸の権が認められた荘園には、2種類あります。
官省符荘(かんしょうふしょう)と国免荘(こくめんのしょう)です。

符荘とは、
太政符(だじょうかんぷ、または、だいじょうかんぷ)、もしくは民部符(みんぶしょうふ)で、
不輸の権を認められた荘園のことです。

符(ふ)とは、上からの命令です。
つまり不輸の権は、太政官もしくは民部省の命令によって認められるのです。

ちなみに、符の反対は、解(げ)ですよ。
なにそれ?という人は、988年のゴロ合わせをご覧下さい。

988-2.jpg

国免荘とは、国司によって不輸の権を認められた荘園のことです。
ただし、これは国司が個人的に認めるものなので、
国司が入れ替わったりすると、無効になってしまう場合があったようです。
いやぁ~、それはモメるでしょうね…

次に、不入の権とは、国司の使者の立ち入りを認めない、という権利です。

国司は、国内の耕作状況を調査して、課税量を決定するため、
検田使(けんでんし)という使者を各地に派遣します。
しかし、不入の権を認められた荘園には、検田使は立ち入れないのです。

こうなると、荘園のなかで何がおこなわれ、どれだけ収穫があるのか、
国司はまったく把握できないわけです…
荘園領主としては好きホーダイしますよね、そりゃ…

*   *   *

というわけで開発領主たちは、こんな魅力的な特権をもつ権力者たちに土地を寄進し、
課税を免れようとするのです。

「えー!そんなことしたら自分の土地じゃなくなっちゃうじゃん!!」って思いますよね。
そうなんです、その土地は、寄進した権力者のものになってしまいます。

でもね、権力者はたいてい中央に家があるんですよ。
それなのに、色んなところにある土地を寄進されても、
わざわざ現地に行って管理なんてできないんですよ。

なので、土地を寄進してくれた開発領主を荘官(しょうかん)に任命し、
いままで通り、管理を任せるのです。

平安11-1.jpg

つまり、寄進によって土地の名義が権力者にかわっただけで、
土地の管理はこれまで通り開発領主がおこなう、というわけです。
あったまいいですねー!

これを寄進地系荘園(きしんちけいしょうえん)といいます。
寄進地系荘園は、11世紀なかばにはどんどんと広がり、公領を圧迫してゆきます。

そこで、1069年に延久の荘園整理令(えんきゅうのしょうえんせいりれい)が発令されるのですが、
それはまたのちのお話。



プリントの右側にうつりましょう。
②寄進地系荘園の発達、です。

開発領主は課税を逃れるため、貴族や寺社などの有力者に土地を寄進するんでしたね。
寄進を受けた権力者は領家(りょうけ)と呼ばれ、
開発領主を下司(げし)・公文(くもん)などの荘官、つまり荘園の管理人に任命します。

領家のなかには、この寄進された土地を、
さらなる権力者、たとえば皇族・摂関家・大寺社など、に寄進をすることがあります。
領家から寄進を受けた超権力者を、本家(ほんけ)と呼びます。

領家と本家のうち、荘園の実質的支配権をもつ方を、本所(ほんじょ)と呼びます。
本所は、荘園における支配権を強めるため、
家臣を荘官として現地に派遣し、下司や公文を指揮させることがありました。
この上級荘官を、預所(あずかりどころ)と呼びます。
なかには、下司や公文のなかから預所に任命される、というパターンもあったようです。

これが、寄進地系荘園のモデルケースです。
分かりましたか?

ではここで、史料を使って、実際の例を見てみましょう。

鹿子木(かのこぎ、肥後国鹿子木荘(かのこぎのしょう)のこと)の事
一、当寺の相承(そうしよう)は、開発領主沙弥(しやみ、在俗の僧のこと)寿妙(じゆみよう)嫡々(ちやくちやく)相伝(そうでん)の次第なり。
一、寿妙の末流高方(たかかた、寿妙の孫である中原高方のこと)の時、権威を借らむがために、実政(さねまさ)卿(大宰大弐(だざいのだいに)である従二位(じゆにい)藤原実政のこと)を以(もっ)て〔1    〕と号し、年貢四百石を以て割(さ)き分(わか)ち、高方は庄家(しようけ、荘園の管理施設のこと)領掌(りようしよう、領有して支配すること)進退(自由にあつかうこと)の〔2    〕職 ((ふつう下司・公文などの下級荘官を指揮して現地を管理・支配する上級荘官のこと、職は職務とそれにともなう権益のこと)となる。
一、実政の末流の願西(がんさい、藤原隆通(ふじわらのたかみち)が出家後に名乗った法名のこと)微力の間、〔3    〕の乱妨を防がず、この故に願西、〔1    〕の得分(収益のこと)二百石を以て、高陽院内親王(かやのいんないしんのう、鳥羽天皇(とばてんのう)の皇女のこと)に寄進す。(中略)これ則ち〔4    〕の始めなり。
(東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじよ)、原漢文)


空欄にあてはまる語句は分かりましたか?

1…領家
2…預所
3…国衙
4…本家

入試で狙われるのは、たいていこの部分ですが、
たま~に鹿子木荘の場所(肥後国、現在の熊本県)を問われたり、
高陽院内親王のお父さん(鳥羽天皇)のことを問われたりすることもあります。

では、この史料を、簡単に訳しておきましょう。

鹿子木荘のこと
一、鹿子木荘は、開発領主である寿妙の子孫が代々受けついできたものである。
一、寿妙の孫である中原高方は、権威を借りるために藤原実政を領家とし、年貢のうち400石を上納した。そして、中原高方は荘園の現地を完全支配する預所となった。
一、藤原実政の孫である願西には力がなく、国衙の不当な干渉を防げなかった。そこで願西は、領家の収益のうち200石を上納する条件で、高陽院内親王に寄進した。これが鹿子木荘の本家のはじめである。

つまり、
開発領主の寿妙の孫にあたる中原高方が、藤原実政に土地を寄進し、
藤原実政が領家、中原高方が荘官(預所)となった。
その後、藤原実政の孫にあたる願西が、高陽院内親王に土地を寄進し、
高陽院内親王が本家となった、ということですね。

人間関係が見えてきましたか?
プリントの右上にある鹿子木荘の表に、人名を埋めて、頭を整理しておいてください。

ちなみに、この史料の出典は、東寺百合文書です。
とうじゆりもんじょ、じゃないですよ、とうじひゃくごうもんじょ、と読みます。
中世を中心とするたくさんの古文書(こもんじょ)が入った約100個の箱が、
東寺(教王護国寺)に伝わったのが、その名前の由来です。

*   *   *

ひとまず荘園制度のお話はこれで終わります。
でも、すぐに荘園公領制(しょうえんこうりょうせい)が登場しますので、
ここまでのところをしっかりと整理しておいて下さいね!

それでは、最後に解答を載せておきましょう。

平安11解答.jpg



次回から、2回にわたって武士を取り上げます。

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コメント 8

U3

じっくり読まないと分からない(笑)
by U3 (2018-05-12 07:08) 

春之助

U3さま

的確なコメントをありがとうございます。
荘園制度はなかなか簡潔に説明することが難しく、これでも相当頭を悩ませながら書いた次第です。
もっと分かりやすい文章になるよう、精進いたします。
by 春之助 (2018-05-12 14:31) 

なーたん

イラストがとても分かりやすいです!
初めて日本史が楽しいと思いました
また、本文の雑談も楽しんで読んでます!!!
これからもまとめプリントたのしみにしています
by なーたん (2020-08-07 14:08) 

春之助

なーたん様
当ブログで初めて日本史を楽しいと思ってくださったとのこと、とても光栄に思います。
そうです!
日本史は楽しいのです!!
その魅力を伝えられるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いいたします。
by 春之助 (2020-08-07 21:48) 

あ

5年ほど前のブログに失礼いたします。先日このブログを見つけてもっと早く見つけたかったと後悔しております笑
ここの範囲が特に苦手で参考にさせていただきました!!紙にまとめながら読んでみて、すごく分かりやすくて感動です[黒ハート]??〓
とりあえず受験が終わるまで助けていただきます!!!〓〓笑
by あ (2023-08-10 19:38) 

春之助

あ様
コメントありがとうございます!
苦手な範囲だったので、紙にまとめながら読んでくださったとのこと、とても嬉しいです!!
荘園ってほんとに難しいですよね~…苦しみ、分かりすぎるほど分かりますよ!!
受験、がんばってくださいね!応援しています!!
by 春之助 (2023-10-12 13:47) 

ももももも

え、ほんとに神ですかレベルで分かりやすい涙
これからも是非活用させてください( ߹ ߹ ) 日本史の勉強たのしめそうです……!!
by ももももも (2023-10-28 13:11) 

春之助

ももももも様
コメントありがとうございます!
神ですかレベルで分かりやすいとのコメント、嬉しいです☆
日本史の勉強、とくに荘園制の部分はツラさしかないと思いますが、少しでも楽しんでもらえれば幸いです!!

by 春之助 (2023-10-28 15:37) 

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